松井冬子の全貌
《世界中の子と友達になれる》ーこの出発点から、松井冬子がどのように自らの表現を突き詰めて来たか
代表的な本画の作品、試行錯誤の軌跡を伝える下絵、厳密に描き込んだデッサンなどに、本展のための新作を加えた約100点
松井冬子展
日曜日終わってしまったけれど、思っていた以上に理解できない内容でも無かったので良かった。

こんなにも「狂気」という言葉が繰り返し出てくる展覧会は今後も無いかもしれない。
どのフロアでも登場する「狂気」。
すべての絵にひそんでいて、人の業・生死・情がおどろおどろしく表出している。
しかもすべてが気が狂ったかのような細かさ
繊細というよりもキチガイといったほうがぴったりかもしれない。
丹念にスケッチし、下図と徹底的に作っていくストイックさ。
美しさとは何かということを突きつけられている気がした。

チケットを買うのに列が出来ていて
その間ロビーでムービーを二回繰り返し見た。

死に向かって円をぐるぐると回る犬
どんどん延びて顔にまとわりつく髪

流れている映像はとても美しくて、見とれてしまうけれど
その裏にひそむどろどろしたものが見え隠れしている。
ただ生を俯瞰しているだけでなく生きていくための「醜い」部分。
どうして同じ場所をぐるぐるとまわるのか
どうして髪が伸びるのか
あまり仏教にも詳しくは無いけれどそこらへんに答えはあるのだろうなとかんじる。

この映像の印象があって作品をみていっても
何か動きがあって流れているような印象を受けた。
だいたいの作品に作者の言葉も添えられている。
その言葉がヒントで作品が読み解けるといったらそんな簡単なものでもないけれど
ただわけの分からない気持ちの悪いものが描かれているわけだはないということは解って良かったと思う。
描ききれないものがたくさんあるんだろうなと思う。

今回の展示のメインは2002年「世界中の子と友達になれる」
実際観て驚いたのは藤色が控えめで、女の子の足もとの血の赤さがひときわ目立っていたこと。
淡い藤の色とは対照的にスズメバチの群れの黒さ
細部にいたる描写の細かさが目をひいた。
この少女は外に出るのか。それとも出ることが出来るのか。
美しいままではいられない。
徐々に染まってまざって大人になっていく。
狂気を隠し持って。

全体を見て印象に残ったのは
理解できるのは「女性」だけだから女性しか描かないということば。
とてもはっきりしていると思った。
これからも深く自己にもぐりつつ黙々と情念の表現を追求していくんだろうなと思う。
次観る時はもう少し理解できるよう知識を付けたいなと思った。
作品名は今わからないのだけど
横位置の構図で炎に蛾がふわっと寄って来ている絵が一番良かった。

CINRAのサイトに
「理性ある狂気」で描く心の風景 松井冬子インタビューが掲載されている
こちらもあとでじっくり読みたい。
http://www.cinra.net/interview/2011/12/02/000000.php

こちらも参考に
なぜ描く? 草間彌生は水玉、松井冬子は幽霊を 現代アート、素朴な疑問(1) :日本経済新聞 http://s.nikkei.com/x8kQG5