「人類の衣服の歴史は人類の歴史そのものと同じほど古い」(杉本博司)
ガブリエル シャネル、イヴ サンローラン、川久保玲など、20 世紀を代表するファッションを杉本博司がカメラの眼でとらえなおした「スタイアライズド スカルプチャー」シリーズを中心に、「装う」ことを問う。
杉本博司 ハダカから被服へ
ガブリエル シャネル、イヴ サンローラン、川久保玲など、20 世紀を代表するデザイナーによるファッションの数々を撮影した「スタイアライズド スカルプチャー」シリーズを中心に「ジオラマ」および「肖像写真」から選んだ写真作品を「ハダカから被服へ」という人類史的な軸として併せて展示。
さらに、杉本博司自身が演出を手がけた文楽の人形、デザインを手がけた能楽の装束、これまで収集した美術工芸品も織り込み、人間の身体と「装う」ことの意味を、杉本博司ならではの視点で堪能できる展覧会。
長い会期ももうすぐ終わり。
これはどうしても観たかったので水曜日駆け込んできた。

中年の女性から学生さんバックパッカー風の外人さんまで
客層は幅広く
あれこれ意見をいいながら楽しんでみてるので会場は華やかだった。
(ちょっとうるさかった)
なので人が引くのを館内をうろうろしてゆっくりゆっくり鑑賞

衣服とは何かというところから人類がたどってきた歴史・人間欲のような心理的なものも含めて
杉本博司作品をこうしたテーマでくくるとこうなるんだという面白い写真展だった。
写真についているキャプションも面白く、蝋人形の肖像写真のシリーズは特にフェイクっぽくもあり読んでいてとても面白かった。

入ってすぐの展示室にはひとつの掛け軸。
ジャック・ゴーティエ・ダゴティの「背筋図」を表具にしたてた粋な作品
なんと医学関係の茶会に使われたというエピソードに流石と思う。
またキャプションには
イギリス人の解剖図が死体を描くのに較べて、
フランス人ダゴティの解剖図には、
医学的好奇心とエロティシズムが一体化して描かれている。

と、こう書かれていて
フランス人ってどれだけ好色なんだよと思ったり。
みだらな作品でもあり学術的でもありアーチスティックな作品でもあってクスッとした。

廊下には
「ジオラマ」および「肖像写真」
サンルームに続く二つ目の展示室は欧米デザイナーの
「スタイアライズド スカルプチャー」
そして
サンルームには「負の定曲率曲線 双曲型の回転面」
その向こうの窓越しにはじめてみる「?」な垣根。
こんなの前は無かったよなぁと思って室内の角にキャプションが添えてあって
庭の垣根も杉本氏の作品であると判明「!」になる
「アートのほうき かえりな垣」というれっきとしたアート作品。
庭の室外機を隠すために作られたもので
垣根を日本の職人に頼むと高額になるが中国のほうきは250円
これを上手く利用してアートに昇華させたという
これまた流石
粋な演出に今回展示の中で一番感動した作品に。

職人の手わざで削りだされた美しい局面の立体作品と安価のほうきを組み立てたもの
この対比がものすごくシュール。
面白すぎた。
この立体の式はなんだんだろうなぁと思いつつ二階へ

二階は邦人デザイナーの
「スタイアライズド スカルプチャー」シリーズと文楽の人形、デザインを手がけた能楽の装束
本物を展示する以上
装束や弾幕の方は布・染めをした職人をどこかに記載して欲しかったなぁと思った。
太閤幕の色鮮やかさにどんな人が染め上げたのか・・・とおもいをはせた。

原美術館という箱の中にひとつのテーマでこれまでの作品を再構成させるという
何層にも杉本博司の面白さが重なっていて非常に見応えのある展覧会だった。
また今回「スタイアライズド スカルプチャー」シリーズをはじめて観て
服とマネキンそしてライティング、プリント全てが完成されきっていて
ジオラマや蝋人形以上に質感が際立って観えてぼーっとなった。
このシリーズは
「人類の衣服の歴史は人類の歴史そのものと同じほど古い」ことに着目し、「人体とそれを包む人工皮膚を近代彫刻として見る」という視点から、生身の身体を持ったモデルではなく、慎重に選んだマネキンを使って撮影され人間にとっての衣服の意味、人間と衣服の関係を掘り下げる示唆的なシリーズ
ただマネキンに着せて撮影されたわけではない。
人間も色も排除して素材・質感・シルエットを堪能しきるためのコレクション。
ユダヤ人への差別的な発言でクリスチャン・ディオールから追われたジョン・ガリアーノのスーツ「
スタイアライズドスカルプチャー 011」が本当にカッコ良かった。
川久保玲の質感もただただびっくり。

横浜ビエンナーレの展示以降
本格的な杉本博司theコレクションを観ている気がする。

また階段の踊り場に展示された「山本耀司」の木片と蝶番による奇抜なドレス。
これはマルセル・デュシャンの「階段を降りる裸体No.2」のイメージをひっぱってきたものらしい。
(弐代目・青い日記帳の記事にて)
なんと・・・随所に盛り込まれた趣向がすべて受け取れない自分のレベルの低さにただただはずかしくもなった展覧会でした。

その日はユニクロ・GAP・コムサ・unnana・H&M・無印で自分を包んでました。
これが自分なわけです。